JR東日本とJR北海道が上野〜札幌間で運行していた、寝台特急「北斗星」号。青函トンネル開業の1988年から2015年8月の最終運行までの27年半、東京と北海道を結んでいた伝説の寝台特別急行列車です。最盛期には1日3往復が運行されたほか、繁忙期には臨時列車や“夢空間”連結のほか、開放B寝台のみで編成された「エルム」号が運行されるなど、活発に夜行列車が運行されていました。
いわゆる“ブルートレイン”と呼ばれる青い車体の客車と、牽引機関車のセットで運行されていました。牽引機関車は、上野〜青森間ではEF81形およびEF510形500番台電気機関車、青森〜函館間はED79形電気機関車、函館〜札幌間ではDD51形ディーゼル機関車(重連)が担当。客車は24系25形で、JR東日本・尾久車両センター所属車とJR北海道・札幌運転所所属車が使用されました。
「北斗星」は、同じ区間で運行していた寝台特急「カシオペア」(2016年3月定期運行終了)や、上野と青森を結んでいた寝台特急「あけぼの」(2015年1月ラストラン)、大阪と函館・青森を結んだ寝台特急「日本海」(2013年1月ラストラン)などと共に、東北・北海道地区を彩った列車でした。引退後も人気は高く、車両の保存や活用の声が多くあがっていました。
そんな中、茨城県筑西市にある「ザ・ヒロサワ・シティ」が車両を購入。保存と展示に向けた準備を進めています。「ザ・ヒロサワ・シティ」“ユメノバ”のレールパーク内には、「北斗星」のヘッドマークを装着した電気機関車EF81 138と、4両のJR東日本24系25形客車(オロハネ24 551、スシ24 505、オハ25 503、オハネフ25 12)が連結された状態で鎮座しています。定期運行時の電源車を含む客車12両編成のフル編成ではありませんが、往年の雰囲気を十分に感じることができます。同施設はまだ一般公開は開始されていませんが、今年9月に開催した「FlyTeam・レイルラボ合同オフ会」や、12月末まで行われている「茨城デスティネーションキャンペーン(茨城DC)」で一般公開が実施されました。
EF81形電気機関車138号機は、引退時JR東日本の青森車両センターに所属。2015年11月に郡山総合車両センターへ廃車回送されていました。運転席窓の上部には、氷柱切りの“ヒサシ”が装着されており、当時同センターに所属していた136〜139号機などと共に、鉄道ファンからの人気が高い機関車でした。「北斗星」を牽引するEF81は、東京都の田端運転所所属の機関車が担当することになっており、晩年は主に「あけぼの」牽引へ使用される機会が多かったものの、138号機は臨時運行の「北斗星」を牽引したこともありました。
24系客車は、4両を連結した状態で展示。すべてがJR東日本の尾久車両センターに所属していました。JR北海道所属車両は、一部を除いてすべて廃車・解体されており、ここに残る「北斗星」客車は非常に貴重な存在です。
EF81 138の後ろには、1号車としてオロハネ24 551を連結。この車両は、北斗星で最上位個室となるA寝台個室「ロイヤル」(シャワールーム付き)を中央に2室配置し、「ロイヤル」を挟むようにB寝台2人用個室「デュエット」を7室配置しています。ラストランの際には、編成の4号車に組み込まれていた車両です。最上位個室を擁するだけに、この1号車の壁面も木目調のデザインで落ち着きのある空間となっています。
2号車・スシ24 505は、食堂車「グランシャリオ」として北斗星の中でも貫禄と異彩を放っていた車両です。昭和63年に交直流特急形電車に組み込まれていた食堂車サシ481 68から改造され、北斗星の客車編成へ組み込まれました。
「グランシャリオ」には28席を設置。上野発、札幌発いずれも共通した運営が行われており、夕食(ディナータイム)はみどりの窓口などで事前購入する形式が取られ、フランス料理(7,800円)または懐石料理(5,500円)を楽しむことができました。ディナータイム終了後、比較的安価に食事などを楽しむことができる“パブタイム”も営業。朝食時間帯には、洋朝食または和朝食(いずれも1,650円)を提供していました。
3号車・オハ25 503は、全室ロビーカーでフリースペースとなっています。テレビが設置されているほか、ゆったりとくつろげるソファー席が複数設置されています。また、シャワールームが2室設置されているのも特徴で、A寝台の利用者以外の希望者は食堂車「グランシャリオ」でシャワーカードを購入し、時間指定で利用することができました。1車両がまるまるロビーカーとなっていたのはJR東日本所属の客車のみ、JR北海道所属の車両が使用される北斗星では、“半室ロビー”となっていたのが特徴で、この車両の半分はB寝台1人用個室「ソロ」でした。
同車はラストランの際、6号車に組み込まれていました。
4号車・オハネフ25 12は、車掌室が付いた編成最後尾に連結された車両でテールマークが付いています。北斗星に使用されていた24系客車の乗降用扉は、折り戸から引き戸方式へ耐寒耐雪工事が行われており、雪や風が車内へ吹き込まないような対策がされています。車内は、開放式B寝台(2段式)のみで定員は32名です。通路に設置された折り畳み椅子や小さな鏡など、当時の様子がそのまま残されています。車端部には車掌室が設置されており、寝台列車ならではのオルゴール「ハイケンスのセレナーデ」を今でも流すことができます。また駅名対照表を見ると、同車と同じく尾久車両センターの客車を使用していた寝台特急「出雲」の方向幕や、東北・北海道地方の寝台特急で使用されていた方向幕があることがわかります。
ここまで現役当時の姿をそのままに、保存・展示されるのは大変貴重な存在。今後、寝台内で宿泊ができるように整備が進められる計画です。寝台特急「北斗星」の当時を懐かしんだり、現代に蘇ったその姿を初めて堪能するのにもピッタリの施設です。「ザ・ヒロサワ・シティ」からの、公開に関する続報が期待されます。
◼️ザ・ヒロサワ・シティのアクセス
【車】・常磐自動車道・谷和原ICから国道294号で約45分
・北関東自動車道・桜川筑西ICから国道50号で約15分
・首都圏中央自動車道・常総ICから国道294号で約35分
【電車】・JR水戸線「下館駅」南口下車、タクシーで10分
・関東鉄道常総線、真岡鉄道「下館駅」南口下車、タクシーで10分
【バス】・JR水戸線「下館駅」北口から“筑西道の駅循環バス”で22分
「廣澤美術館」下車 *全日運行
・JR水戸線「下館駅」北口から“筑西市広域連携バス”で12分
「廣澤美術館」下車 *土日祝日運行