JR東海は2022年6月16日(木)、世界初となる新幹線車両による架線電圧を維持する機能の開発について発表しました。東海道新幹線を走行するN700S新幹線電車に搭載する主変換装置を改良することで、これまで地上の電力補償装置などを使用していた架線の電圧低下を抑制する機能が車両で実現します。この新機能により、約3億円の電気料金が削減できる見込みです。
東海道新幹線は、利用客の増加に伴い順次輸送力を増強し、2020年3月から、「のぞみ12本ダイヤ」で運行しています。5分に1本という過密ダイヤでの運行で、架線電圧が低下し列車の安定的な運行に必要な電圧を維持するため、地上の電力設備を増強することで、 架線電圧を維持してきました。 同社はこれまで、架線の電圧低下を抑制するため、変電所の増設に加えて電力補償装置の導入など地上の電力設備の増強を進めており、電力補償装置を沿線に21台設置しています。
今回開発された新機能は、N700S車両に搭載する主変換装置のソフトウェアを改良。列車本数が増えるにつれ架線の電流の位相が遅れ、電圧が低下する現象を、電流の位相の遅れを小さくして抑制することができます。車両で架線電圧を維持することで、一部の変電所や電力補償装置を削減することができます。
東海道新幹線の全編成に導入が完了した際には、約1割の変電所と約半数の電力補償装置が削減できる見込みです。 さらに年間約2千万kWhの電気使用量の低減により、約3億円の電気料金と約1万tに相当するCO2排出量を削減できる見込みです。
今後、N700Sの一部の営業車に順次この機能を搭載し、2023年2月まで機能確認試験を実施。試験結果の確認後に、他のN700Sへ搭載を拡大していく予定です。