鉄道・運輸機構(JRTT)と全日本空輸(ANA)は2020年8月20日、 「コラボで見せます!鉄道と航空の舞台裏体感ツアー」を開催しました。ツアーを企画したのは、ANAのCAで、現在はJRTTに出向している横畑さんです。全く畑違いの彼女が企画した前代未聞のコラボツアーが、とても新鮮で、参加者は終始楽しげな様子でした。
ツアーは、国内最大級のANAの訓練施設「ANA Blue Base(ABB)」と、JRTTが整備主体となって建設を進める相鉄・東急直通線の新横浜駅を一度に見学できるものです。企画した横畑さんは、2021年10月に自ら手を挙げJRTTへ出向。広報戦略課に所属し、各地の鉄道建設現場の取材やSNSでの発信、広報誌の作成などに携わっています。今回の企画は、交通インフラを支える航空と鉄道両者の舞台裏をぜひ身近に感じてほしいとの思いから発案・実現しました。JRTTによると、「新横浜駅」をツアー形式で一般に公開するのは、初めてとのことです。
集まった参加者は、10代から70代までの幅広い世代の18名です。ABBのツアーでは飛行機好きの女性や就職活動中の学生、家族連れなどが多いそうですが、今回は、男性参加者が多く見られました。また、新横浜駅のある神奈川県からの参加者も多く、地元の新たな路線に、関心を寄せていることが伺えました。
一行はABBで、ナビゲーターを務める現役CAの木下さんと河野さんとともにツアーをスタート。エントランスでは、画面に触れることなく、CAやパイロット、整備士の制服をバーチャルで着用した自分の姿を撮影するなど楽しんでいました。行程内の訓練エリアでは、実際の様子を見学でき、普段は見ることのできない場面を皆が真剣に見つめていました。シミュレータールームでは、パイロットが実際にコクピットで操作する映像や音声が流れ、本番さながらの体験をすることができます。体験エリアでは、コクピットや客室座席、CAが使用するワゴンやエプロンを着用しての体験ができ、ナビゲーターに質問したり、撮影したり、終始和やかな雰囲気で楽しんでいました。見学を終えた参加者は、グッズ売り場でツアー参加者限定販売の記念グッズを購入し、満足そうでした。
今回ナビゲーターを務めた木下さんと河野さんによると、個人での参加者が多く、飛行機にまだ乗ったことがない人もいたそう。また、飛行機・鉄道ファンというよりも、両方含め「乗り物」が好きという印象が強かったそうで、「航空業界についてあまり知らない方が興味を持って交通インフラ全般が盛り上がってくれたら」、と話していました。
参加者はその後、羽田エクセルホテル東急内のカフェ&ダイニング「フライヤーズテーブル」で、「空飛ぶてりやきライスバーガー」を楽しみ、一路、建設中の相鉄・東急直通線「新横浜駅」へ。ヘルメットを着用し工事現場の入り口から地下深くまで降りていくと、「新横浜駅」のコンコースに辿り着きました。工事資材が並んだ現場では、まだ客を迎え入れていないピカピカの構内に感動する場面もありました。さらに下っていよいよホーム階へ、2面3線のホームでは参加者全員で記念撮影。そして、今しかできない線路へ降りる貴重な機会も設けられました。各々、満面の笑みで、特別な記念撮影を楽しんでいるのが印象的でした。
相鉄・東急直通線(神奈川東部方面線)は相鉄・JR直通線の羽沢横浜国大駅から東急線の日吉駅までの約10kmを結ぶ連絡線です。相鉄線内の新横浜〜西谷間(約4.2km)を「相鉄新横浜線」、東急線内の日吉〜新横浜間(約5.8km)を「東急新横浜線」として2022年度内に運行を開始予定です。2013年に着工し、8月20日現在、運行に関わる工事については約8割が完成し、秋頃には列車の試運転も予定されています。「新横浜駅」は相模鉄道と東急電鉄の共同使用駅として開業、それぞれの会社の魅力を感じられる駅になる予定です。JRTTは今回、こうした建設現場の裏側を公開することで、より鉄道の安全・安定輸送の大切さ、大変さなどを知ってもらえたら、と話しました。
「鉄道建設現場は、ダイナミックで大きなプロジェクトをしていることを実感します。」こう語った横畑さん。CAとして身近に旅客と接するソフト面と、今回出向して知った建設のハード面から両者の裏側を知り、広く一般の人に周知したいという彼女の熱い思いは、参加者にも強く伝わったと思います。今後、再びANAへ戻り、新たなステージでも活躍してくれることを願います。