全国各地で人々の足として活躍するJRの車両。その側面や車内の車端部には、「クハ」や「モハ」、「サロ」といった車両を区分するカタカナの記号が表記されています。実はそれらの「カタカナ」の記号は「車両称号規程」という規則によって定められており、記号ごとに意味を持つということをご存じでしょうか?このシリーズでは、JR車両の側面に書かれたカタカナ記号の意味を全4回にわたって徹底解説。第1回にあたる今回は、電車や気動車で用いられる記号の意味をご紹介します。
記号の前半は「車種」を表す
記号の前半(「ク」・「クモ」・「モ」・「サ」など)の部分は、車両の車種を表しています。具体的には以下の通りです。
・「ク」:電車で運転台のある車両(制御車)
・「モ」:モーターを積む車両(電動車)
・「クモ」:運転台とモーターを積む車両(制御電動車)
・「サ」:モーターも運転台もない車両(付随車)
・「キ」:気動車でエンジンを積む車両
・「キサ」:気動車でエンジンを積まない車両
記号の後半は「用途」を表す
カタカナの後半の部分(「ハ」・「ロ」・「シ」・「ユ」など)は、車両の用途を示しています。これらは、車両のグレードを表記する記号(「ハ」・「ロ」など)と、寝台や食堂といった車両の設備を表記する記号(「ネ」・「シ」など)の2種類に分けられます。グレードを表記する記号には以下のものが存在します。
・「ハ」:普通車
・「ロ」:グリーン車
・「イ」:現在は主にクルーズトレインに使われる
また、車両の設備を表記する記号には以下のようなものがあります。
・「シ」:食堂車
・「ネ」:寝台車(グレードと合わせて、「ロネ」(A寝台車)や「ハネ」(B寝台車)のように使用)
・「ユ」:郵便車
・「ニ」:荷物車
・「ヤ」事業用車
・「ル」配給車
基本的には、上記の「車種」を表す記号と「用途」を表す記号を組み合わせ、「クハ」は運転台のある普通車を指し、「クモロ」では運転台とモーターを積むグリーン車のようにカタカナの記号を組み合わせて使用します。
なお、複数の設備を持つ車両(例:グリーン車と普通車、普通車と食堂車など)を「合造車」と呼びます。合造車の場合は、「クロハ」や「モハシ」、「サロハネ」のような順番でカタカナを重ねて表します。
「キサロハ」「クモハユニ」?長いカタカナ記号とその意味をご紹介
これまでに説明したカタカナ記号の意味を踏まえ、ここからは長いカタカナ記号やレアな記号とその意味をご紹介します。
◾️「キサロハ」
「キサロハ」は、「気動車でエンジンを積まない、グリーン車と普通車の合造車」という意味になります。「キサロハ」の記号は、JR北海道のキハ183系「キサロハ182形」において使用されました。ダブルデッカー車であるキサロハ182形は、特急「スーパーとかち」用にキサロハ182-551から554までの4両が、ジョイフルトレインであるキハ183系クリスタルエクスプレス編成向けにキサロハ182-5101の1両が製造。「スーパーとかち」用の4両は2013年に、クリスタルエクスプレス編成用の1両は2019年に引退しています。
◾️「クモハユニ」
「クモハユニ」は、「電車のうち運転台とモーターのある、普通車・郵便車・荷物車の合造車」という意味になります。「クモハユニ」は戦前の鉄道省が製造した旧性能電車である、42系「モハユニ44形」などが1959(昭和34)年以降に用いました。同年には「車両称号規程」が現在の仕様に変更され、運転台とモーターを持つ電車(制御電動車)の記号が「モ」から「クモ」へ。「モハユニ」は「クモハユニ」となり、国鉄で最も長いカタカナ記号を用いることとなりました。「モハユニ44形」などは戦前に横須賀線向けの車両として製造。戦災や転属、改造などを経験しつつも1980年代まで身延線などで活躍しました。
以上、JRで活躍する電車や気動車で用いられるカタカナ記号の意味をご紹介しました。今後JRを利用する際には、ぜひカタカナ記号にも目を向けてみると面白いかもしれません。