埼玉県所沢市に2024年9月24日(火)開業予定の広域集客型商業施設「エミテラス所沢」。西武鉄道 所沢駅西口からデッキを通じて直結する(徒歩約4分)施設で、西武グループの西武リアルティソリューションズと住友商事が共同で開発を進めてきました。オープンに先駆け、両社は9月18日にメディア向けの内覧会を開催。レイルラボは、西武鉄道所沢車両工場跡地に建つ同施設に再び集結する「西武鉄道の3つのレガシー」を探りに訪れました。
同施設は、事業費が約295億円、地上7階(商業フロア4層)にシネマコンプレックスやフードコートなど全142店舗が入ります。すでに開業している所沢駅の駅ビル「グランエミオ」と合わせ、所沢駅周辺エリアでの回遊性を高め、“ベッドタウンからリビングタウンへの進化”を目指すとしています。
前述の通り「エミテラス所沢」は、所沢車両工場の跡地に建設されています。同工場は当時、日本の大手私鉄で唯一の直営工場として車両を新造。1960年から1970年代製造のほとんどは自社製で、最盛期には年間50両を超え、全国各地の地方鉄道へも供給されていました。車両新造だけでなく、車両の定期点検や自動車の車検・修理、西武園ゆうえんち・としまえんの遊戯物の点検・修理も実施されていたそうです。
1999年3月に9000系の出場をもって新造業務を終了。翌2000年6月に、2000系の重要部検査が最後の出場車となりました。同年開設の武蔵丘車両検修場に機能を移転したことで、所沢車両工場は役割を終えました。閉鎖までの間に1,200両以上の車両が新造され、現在でも2000系をはじめ同工場で製造された車両が活躍しています。
今回、この土地の持つ歴史に着目した不動産開発として、「引き込み線」「2000系シミュレータ」「おとぎ電車」を設置。所沢車両工場の歴史を未来へ受け継ぐべく、ここにルーツをもつ重要な「西武鉄道の3つのレガシー」が復活します。
「引き込み線」
所沢車両工場と鉄道本線の車両の往来に使用した、双方をつなぐための線路である「引き込み線」が、当時の場所の一部にレールを再現して設置されています。
「2000系シミュレータ」
西武鉄道では、乗務員の養成・教育に車両を模した運転用シミュレータを導入しています。今回、実際に鉄道係員養成所の訓練等で使用していた2000系運転用シミュレータの一部を館内(1階エスカレーター横)に設置。このシミュレータで数多くの乗務員が訓練を受け、現在も西武線で乗務中とのこと。現役で運行しているリアルな車両が、まるでトンネルから駆け出してきているような配置で、大人も子ども楽しめるフォトスポットとなりそうです。
「おとぎ電車」
「おとぎ電車」は、1960年に西武鉄道所沢車両工場で製造されたB11形B15蓄電池機関車です。かわいい蓄電池機関車と客車が走る様子から「おとぎ電車」と呼ばれていました。現在の西武鉄道山口線(レオライナー)の前身で、当時は、西武遊園地駅とユネスコ村駅(当時)を結び、1984年まで運行されていました。現在、当時の姿を再現すべく補修作業を実施中で、オープン日の設置は間に合わないとのこと。西武リアルティソリューションズの担当者は、「今後、そう遠くない期間で同施設へ搬入を予定している」とコメントしています。車両は屋外に展示される予定です。
施設名称「エミテラス所沢」に込めた想いについて両社は、西武グループのスローガンである、「でかける人を、ほほえむ人へ。」の「ほほえみ」の「Emi」と、住友商事グループが商業施設を開発する上で大切にしている「居心地の良さ」を象徴する「Terrace」を組み合わせて表現したとしています。
これまでエリアになかった店舗や新しい体験を提供する店舗のほか、駐車場やレンタルベビーカートの貸出し状況、トイレ利用状況など、さまざまな場所でDX・AIを活用した最新鋭のシステムを導入するなど、新たな所沢の顔となる「エミテラス所沢」。そして、この土地にルーツを持つ「西武の3つのレガシー」が里帰りし、再びその歴史に名を残すことになります。