1971年に開港した阿蘇くまもと空港(熊本県益城町)は、熊本市内から約20kmの距離にあります。また、熊本県は九州のほぼ中心に位置するため、“九州のセントラル空港”としての役割を担うことも期待されています。熊本駅までは、博多駅から最速32分、鹿児島中央駅からは最速42分でアクセスが可能です。しかしながら熊本駅からは、空港リムジンバス、JR豊肥本線の阿蘇くまもと空港駅(肥後大津駅)から「空港ライナー (9人乗りジャンボタクシー)」利用に限られ、アクセス改善が検討されていました。そこで熊本県は、“九州のセントラル空港”化と市内のアクセス向上、「熊本地震からの創造的復興の総仕上げ」として、定時性に優れた空港アクセス鉄道整備に向け取り組みを開始しました。
今回は、空港アクセスの現状と空港アクセス鉄道計画について解説します。
◼️熊本市内〜空港アクセスの現状
空港リムジンバス
熊本市内ー空港間のアクセスを支えてきた空港リムジンバス。熊本市内のみならず、阿蘇方面や宮崎・大分へも空港と直通で結んでいます。
空港と、熊本駅や新市街の桜町バスターミナル間の運賃は片道1,000円、所要時間は約1時間です。
JR豊肥本線と無料「空港ライナー」
JR豊肥本線の熊本駅と肥後大津駅間の所要時間は約30分。肥後大津駅と約7kmの距離にある空港との間には、路線バスなどがなく、タクシーの利用に限られていました。そのため2011年から、空港リムジンバスによるアクセスを補完する目的で、空港と駅を結ぶ「空港ライナー (9人乗りジャンボタクシー)」の試験運行を開始。2017年からは正式運行されています。運賃は無料、熊本県と駅が所在する大津町、JR九州、熊本国際空港の予算で維持されています。
6時台から21時台まで、約30分おきに1日27本ずつ計54本を運行。定員が9名のため、満員の際は次の空港ライナーを利用する必要があります。その場合でも可能な限り増車対応を行っているため、概ね希望通りの時間に利用することができます。所要時間は約15分、対象は「空港利用者」です。
熊本駅と肥後大津駅間の運賃(片道)は、480円。熊本市内での目的地が、熊本城や桜町などの新市街の場合、熊本駅などから市電の利用が必要となり、空港リムジンバスの利用が便利になります。しかし、空港ライナーと電車の接続次第では、短時間かつお得に移動をすることができます。
◾️未来の空港直通線「空港アクセス鉄道」
熊本県は2022年11月に、九州旅客鉄道(JR九州)と豊肥本線の肥後大津駅から分岐して空港まで乗り入れる計画について、合意しました。2026年度までに調査や環境アセスメントを進め、2027年度に着工、早ければ2034年度中の開業を目指します。
JR豊肥本線は九州横断路線として、阿蘇の山々を越えて熊本駅と大分駅間の約148kmを結ぶ、通称「阿蘇高原線」とも呼ばれている路線です。熊本駅から肥後大津駅までは電化区間で、大分駅近くまでは非電化区間になっています。今回の計画では、電化区間終端で特急列車の停車駅でもある肥後大津駅から、阿蘇くまもと空港まで電化区間として新線を建設。熊本駅からの直通電車を運行する計画です。また肥後大津駅は、熊本駅と別府駅や大分駅を結ぶ「九州横断特急」や、熊本駅と宮地駅を結ぶ「あそ」「かわせみ やませみ」、別府駅とを結ぶ「あそぼーい」の停車駅でもあり、各地へのアクセスに便利です。
肥後大津駅の近くには、台湾の半導体製造大手「TSMC」が熊本工場を建設中で、新たな雇用創出や人流の変化も今回の計画決定の一手となった模様です。
空港ライナーおよび電車の利用や、空港リムジンバスなど、用途や利便性に応じたアクセスを選択する環境がすでに整っています。台湾の大手半導体メーカーの県内進出や、それに伴う国際線の就航で盛り上がりを見せる阿蘇くまもと空港。今後、空港アクセス鉄道の開業によって、さらなる選択肢の拡充が期待されます。
※配信後、タイトルを訂正いたしました。