鉄道技術の研究・開発を行う「鉄道総合技術研究所」(通称:JR総研)のある東京都国分寺市光町。新幹線技術開発の地として有名なこの町は、JR総研の前身「鉄道技術研究所」で東海道新幹線の開発研究を行なっていたことから、「ひかり号」にあやかり、「光町」と名づけられました。JR総研の目の前にある市政施設「ひかりプラザ」には、試験車両として活躍した国鉄951形新幹線電車の実車両が、新幹線資料館として静態保存されています。いつでも無料で入館できることもあり、子どもから大人まで、市民の憩いの場になっています。
この資料館には、なんと2021年に惜しまれながら引退した「JR東日本E4系新幹線電車 Max」の座席が設置されています。一体なぜ、この場所にやってきたのでしょうか?国分寺市役所を訪れ、お話を伺いました。
■951形新幹線とは?
951形は1969(昭和44)年に2両1編成で製造された試験車両です。新幹線の速度向上を目的として開発された車両は1972(昭和47)年2月24日に当時の電車として世界最高速度の時速286キロメートルを記録。日本の新幹線開発に大きく貢献した車両です。951形は廃車後、1991(平成3年)年に鉄道総合技術研究所から譲渡され、新幹線「ひかり」が由来となった国分寺市光町「ひかりプラザ」の資料館となりました。
■新幹線資料館の中をのぞいてみよう
資料館は当時の運転席も自由に座ることができ、車窓からは古巣のJR総研を望むことができます。室内にはジオラマや新幹線発展の歴史を描いたパネル、模型等を展示。また、鉄道関連資料や鉄道絵本、DVDの上映など、小さな子ども連れでもゆっくりと、当時の偉大な功績を見学することができます。
■E4系新幹線 Maxの座席がなぜここに?
2020年8月、この951形が老朽化したことから、市では改修を行うため、クラウドファンディングを実施。382件の支援により約570万円の寄付が寄せられました。改修では車体の塗装、新幹線資料館内部の床を張り替え、車内座席の交換を実施し、2021年4月1日、現役の車両のように綺麗に生まれ変わり、資料館はリニューアルオープンしました。その際に新たに設置されたのがE4系の座席です。改修に伴い、当初は地元のバス会社の廃車座席を設置するという案がありました。しかし、951形を愛する地元市民やファンなどからは、鉄道車両の座席を設置してほしいとの要望があがりました。そこで、 新幹線技術開発の地である新幹線資料館の改修活動にJR東日本が賛同、新幹線車両の座席の寄付を申し出ました。こうして、3列のMaxの座席が設置されることになりました。
■座りごごちは?
座席はMaxの自由席と、広々したグリーン席が設置されています。自由席はMaxらしい2階席の肘掛けなしの席で着席して目を閉じれば、高い車窓から眺める新潟方面に向かう高い山々や、東京方面に向かう街の夜景など、さまざまな思い出が蘇り、思わず泣けてきました。そして、現役時代には乗車する機会のなかったグリーン席にも、無料ということもあり、思う存分ゆったりと座ることができます。
■新幹線資料館 今だけの特別配布実施中
2022年2月に951形が世界最高速度記録達成し50周年を迎えました。「ひかりプラザ」では、世界最高速度記録達成50年を記念したスタンプを設置、3月31日(木)まで、記念スタンプ台紙を配布しています。新幹線資料館のある「ひかりプラザ」はJR中央線 国立駅 北口より徒歩約5分、休館日は第2・第4月曜日、祝日の場合は翌火曜日です。
2022年は、951形が世界最高速度記録達成し50周年、東海道新幹線「のぞみ」デビュー30周年、山陽新幹線 新大阪〜岡山間50周年と、新幹線のお祝いの節目年。951形が貢献した日本の新幹線のスピードの歴史を、E4系の座席に座って体感してみてはいかがでしょうか?