2021年10月1日(金)、JR東日本E4系新幹線電車「Max」がついに定期運行ラストランを迎えます。カウントダウンの数字も少なくなり、いよいよお別れの時が近づいてきたことを思い知らされています。残り少ない運行を噛み締めながら、2代目2階建て新幹線として多くの利用者を乗せた24年間を、感謝と惜別と愛を込めて振り返ります。
E4系は1997年12月に営業運転を開始したオール2階建て新幹線車両で、「Multi Amenity Express」を表す「Max」の愛称で親しまれました。東北・上越新幹線の開業時に製造された200系新幹線の老朽化による置き換えと、初代オール2階建て新幹線のE1系導入後も増え続けた通勤旅客需要に対応するため、8両編成26編成が製造されました。
8両編成の両端には分割併合装置を備え、Max2編成を連結して16両編成としても運行、このときの最大定員数1,634名は、高速車両としては世界最大を誇ります。昨今の列車の乗車率からすると考えられないかもしれませんが、当時はJRが新幹線沿線での住宅地開発に乗り出すなど、郊外から都心へ新幹線通勤する利用者が急激に増えていました。また、スキー・スノーボードブームも相まって、年末年始などの繁忙期にはMaxでさえも通路までぎっしり埋まってしまうことが珍しくありませんでした。
デビュー当初は初代カラーリングと呼ばれる「山吹(黄)色」のライン(帯)が施され、東北新幹線で運行を開始、2001年からは上越新幹線でも運行を開始しました。2005年12月以降は、東北新幹線の仙台駅以北の定期運用を終了し、E1系との置き換えが進む上越新幹線での運用がメインとなります。2012年からは、上越新幹線の越後湯沢駅以北で16両編成での営業運転を開始。同年、東北新幹線の大宮駅以北での定期運用が終了しました。
2014年、「新潟デスティネーションキャンペーン」開催に合わせて車体中央のラインが黄色から「朱鷺(トキ)色」に変わり、側面には羽ばたく3羽の朱鷺がデザインされ、2016年秋には全ての編成が新塗装に統一されました。 2021年3月からは、運用中の全7編成に、ラストランロゴをモチーフにした車両ラッピングを施して最後の日まで運行されます。
当初E4系は2020年度末に引退予定でしたが、置き換え予定のE7系が2019年10月の台風19号の影響により、留置していた長野新幹線車両センターで被災。そのため予定を変更して現在まで運用が続けられることになりました。
2階建て新幹線というと、やはり醍醐味は2階席です。大人も子供もあの高さから眺める視界に、初めは感動したのではないでしょうか。視線の先には防音壁に遮られない世界が広がり、横を行く新幹線や下を通る在来線、車などの行き交う姿を見下ろす感覚はとても新鮮でした。また、2階の自由席は、リクライニングと肘掛けのない3列x3列シート構造のため、ゆっくり過ごすのには少々不向きに思えますが、逆に小さなお子さん連れの家族には広々と利用できて快適だったのかもしれません。そして、1階席にも魅力はありました!それは、冬のスプリンクラー体験です。上越新幹線は言わずと知れた豪雪地帯を通るため、融雪設備として「スプリンクラー」が設置されている箇所があります。大雪の日などに乗車すると、窓ガラスいっぱいに勢いよく吹き付けられ、それはもう遊園地のアトラクションのような感覚を体験することができました。
そして、もう一つ消えてしまうもの。
「階段付近にお立ちのお客様はお近くの手すりにおつかまりください」
このアナウンスも、もう聞くことができなくなります。随所に2階建て感が散りばめられていたことが走馬灯のように思い出されます。
泣いても笑っても10月1日(金)はすぐそこまで来ています。折しも、最終日は19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置が明けたばかり。せっかくだから最後の日に、その勇姿を目に焼き付けたいという方も多いと思います。しかし、まだ目にするチャンスはあります!E4系は定期運行を終了後、10月9日(土)、10月10日(日)に新潟〜盛岡間の「サンキューMaxとき&やまびこ」で、10月16日(土)、10月17日(日)には新潟〜東京間の「サンキューMaxとき」で、旅行商品専用列車として運行されます。どうか、愛したE4系の最後は、各地で、密にならず、スマートに、「ありがとう」の気持ちを込めて送り出してあげたいですね。